私に暖めさせて下さい。
探してなんになるんですか?
こんな暗闇では見つかりっこありません。
でも幸いなことに
今晩は月夜で
ここに、私たちのそばに月がいるのです。
待って下さい、お嬢さん、
私が誰で、何をして、どう生活しているか、
ひと言で説明する間だけ。
よろしいでしょうか?
私は誰でしょう?私は詩人です。
何をしているかって?書いているんです。
どう生活しているのかって?生きているんです。
私の楽しい貧乏の中で、愛と詩と歌を、王侯のように
惜しみなく費やしていきます。
夢と空想と空に描くお城のおかげで
私は百万長者の魂を持っているのです。
ときどき私の宝石箱から
二人の泥棒が宝石を全部盗んでしまうのです。
美しい目という泥棒が。
たった今も、あなたと一緒に入ってきて
私のいつもの夢
私の美しい夢は
即座に消え失せてしまいました。
しかし盗まれたことは、少しも悲しくありません。
なぜかって、なぜかっていえば
そこは、優しい希望の住処になったからです!
さあこれで私のことがおわかりになったのだから
あなたが話す番です。話して下さい。
あなたは誰ですか?よかったら話していただけませんか?
参考:ビクター株式会社 トスカニーニ/プッチーニ:歌劇「ボエーム」全曲 対訳リブレットより〜